3年間過ごして、一番楽しかった高校時代。でもクラスメイトとの別れはそんなに寂しくはなかった。私が本当に寂しいと思ったのは、その1年前の部活の先輩たちの卒業式の日だった。
文化部で、男の先輩たちばかり。良い「アニキ」というよりはホントに「お兄さん」たちで、いろいろと面倒見てもらった。他の文化部の先輩たちも時々遊びに来た。
春は山へ岩石を採りに行った。水質検査するために自転車に乗って川の源流まで走った。
夏休みは海に行き、河川敷や学校の屋上で天体観測。文化祭の準備で遅くまで学校に残って、たくさんの時間を過ごしたのは、クラスメイトよりも先輩たちとだった。短い放課後は毎日毎日楽しかった。
3年になると、受験なので文化祭を最後に部活に来ることがなくて、その時になって、「ああ、来年になったら居なくなってしまうんだ」と実感し始めた。放課後の科学室に近づいてくるいろんな声が聞こえなくなった。
そして3月はあっという間にやってきた。一人一人名前を読み上げられる。返事をして立ちあがる頼りがいのある背中が在校生席から見えた。青いブレザーを着るのは今日で最後なんだ。先輩たちの青い背中を見るのも最後なんだ。退場していく姿は覚えていない。何だか見送るのが嫌だった。拍手の音しか覚えていない。
卒業式が終わり、部活のみんなで記念撮影。相変わらずふざけて写っていた。その笑った顔が少し憎らしくもあった。置いて行かれる後輩の私らの身にもなってよ!なんて。そして、大きく手を振りながら、先輩たちは学校の坂を自転車で下っていった。「じゃあな!」「またな!」また会える時は来るの?そんなことも聞けないまま、あっという間に姿が見えなくなった。残った同級生みんなで科学室に戻った。もう先輩たちの声が聴こえない教室は3月の空みたいにグレーだった。その時になって少し涙が出た。先輩達がいないからこれからは私たちが主導していかなくてはいけないというプレッシャーなんか微塵も感じなかった。ただただ虚しさの様なものだけが胸の中にあった。
固い桜のつぼみが開く頃には、先輩も私たちも科学室も違う時間の中にいるんだなとぼんやり考えていた。